55歳の女性です。今まで病院にかかったことがなかったのですが、昨日夕食後に突然みぞおちが激しく痛み、吐き気があり、脂汗が出るほどでした。3、4時間ほどして軽くなりましたが、寒気もして夜中眠れませんでした。下痢はありません。朝になっても食事をとるのが怖く、病院に行こうと思っています。
成人の方で突然の上腹部激痛で発症する病気として、急性胆嚢炎、胃十二指腸潰瘍穿孔、急性膵炎、胃アニサキス症などをはじめ極めて多くの病気があります。また、解離性大動脈瘤や急性心筋梗塞、肺炎などで胸部症状のほかに腹部症状が前面に出ることもあります。診療する側としては外科的処置を必要とするのかショックを伴っているのかが重要なポイントです。
この方の場合は中高齢であること、しばらくして軽快してきていることなどから、急性胆嚢炎が最も疑われますが診察をしてみないとわかりません。急性胆嚢炎・胆管炎は胆石を伴うことがほとんどですが、重症例では内視鏡的あるいは経皮的な緊急ドレナージなどの処置を必要とすることがあります。また、肝機能が非常に悪化したりショックをきたすこともあり、おなじ疾患でも病態によって様々な治療法が選択されます。重症例や発作を繰り返すようなら外科手術が必要となります。
胃十二指腸潰瘍の穿孔は潰瘍に穴があいて消化管内容物が腹腔内にもれ激烈な痛みを来たします。多くは緊急手術の適応ですが、最近は軽症例では厳重な管理のもとで手術をしない治療法も可能です。手術法も以前は胃を半分切除していましたが、最近は腹腔鏡下手術で胃を完全に温存する方法で治療可能です。広島市立舟入市民病院は日本でこの手術が最も多い施設の一つです。急性膵炎も重症例では集中治療室での管理を必要とする重篤な病気で、全国集計での死亡率が10%を越す病気です。緊急の血管内治療や血液浄化療法、人工呼吸管理などが必要なことがあります。胃アニサキス症では緊急内視鏡で診断ののち、寄生虫の虫体を取り除く処置が必要です。
このように上腹部の激痛で発症する疾患には、極めて多様な病気や重篤な病気が含まれます。我慢強い方とそうでない方がいらっしゃいますが、急激な上腹部の激痛がしばらく続く場合には、夜間でも救急外来を受診されることをお勧めいたします。
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