68歳の女性です。以前ある病院で開腹手術を受けましたが、手術後に発熱が続きお腹のキズから膿(うみ)がでて洗浄処置を受けました。退院後しばらくしてキズあとが膨らんできました。最近では膨らみが大きくなり、食後に痛んだり、外出など日常生活に大変不便です。いつもキズ跡にさらしを巻いて生活しており、とても憂鬱(ゆううつ)な日々を過ごしています。
この方の場合、手術の創が化膿して洗浄処置が行われ、その後傷跡が膨隆してきたことから、腹壁瘢痕(ふくへきはんこん)ヘルニアと考えられます。最近の外科手術では腹壁を吸収糸で閉鎖することが多く、創の化膿は少なくなっていると思われます。しかし、腹膜炎の手術、栄養状態の悪い方や太った方の手術の場合、創の化膿に引き続いて瘢痕ヘルニアをきたすことがあります。治療は瘢痕ヘルニアの程度、年齢、日常生活の支障度を考慮して、患者さんに合わせて考える必要があります。小さい場合は経過をみることもあります。巨大な瘢痕ヘルニアの場合、小腸の1/3程度がお腹の外に脱出し、腹痛、食欲低下、歩行障害などが認められる場合には手術が必要になります。手術にはお腹の壁を直接縫合(ほうごう)する方法と、補強材を使用して修復する方法があります。再発率や術後の疼痛が問題となりますが、直接縫合では再発率が30~60%と言われており、最近では後者の方法が普及しつつあります。将来、別の病気でお腹の手術が必要になる時のことも考慮しなければなりませんが、瘢痕ヘルニアのために日常生活が著しく障害されたり、精神的に憂鬱になっておられる場合などは手術治療を含めて専門医にご相談されることをお勧めいたします。
(リビング広島2004年2月14日掲載)
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