5才の男の子です。今朝からおちんちんの下の袋を痛がります。少し赤くなっているようです。吐き気はありません。少し熱があるようです。
男の子でおちんちんの付け根(鼠径部と言います)から袋(陰嚢)を急に痛がり、腫れたり、赤くなったりする疾患を、一般に急性陰嚢症と呼びます。これに含まれる疾患としては、鼠径ヘルニア特に嵌頓(かんとん)、陰嚢水腫、睾丸(精巣)炎、副睾丸(精巣上体)炎、精巣捻転症、精巣垂捻転症、急性特発性陰嚢浮腫などがあります。この中で特に緊急性を要するのは、鼠径ヘルニア嵌頓と精巣捻転症です。診断には問診、視診、触診、血液尿検査、超音波検査などが行われますが、上の質問のお子さんは、症状から精巣炎または精巣上体炎が考えられます。
一つ一つ説明します。鼠径ヘルニアはよく脱腸とも呼ばれていますが、新生児期から乳幼児期によく見られ、子供で手術を必要とする疾患の中で最も多いもので、私の病院でも子供の手術全体の3分の一を占めています。嵌頓とは脱出した腸管が出口(ヘルニア門)で締め付けられて戻らなくなった状態を言います。これを放置すると腸管が壊死になる恐れが有りますので、早めに手で押し戻してやる必要があります。陰嚢水腫の原因は鼠径ヘルニアと同じですが、水が溜まっているだけの状態で、自然に溜まらなくなることもあります。精巣炎、精巣上体炎は、尿道から入った細菌が精子を送る管から逆流して起こり、抗菌薬の内服で治ります。精巣捻転症は新生児期か10才以上に多く、早期に手術などで捻転をなおしてやらないと精巣が壊死になってしまいます。急性特発性陰嚢浮腫はアレルギーなどの原因により陰嚢の皮膚だけが赤く腫れ、精巣には全く変化が起こりません。放っておいても自然に治りますが、炎症やアレルギーを押さえる薬を処方することもあります。
いずれにしても赤くなったり、痛みがある時は早めに専門の小児外科がある病院で医師の診察を受けられることをお勧めします。
(リビング広島2004年1月10日掲載)
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